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 ご挨拶

頭頸部外科は社会と対話をしよう

市村 恵一(自治医科大学医学部耳鼻咽喉科学講座)

 このたび第21回日本頭頸部外科学会会長の役を拝命いたしました。本学会は日本耳鼻咽喉科学会の関連学会の中で頭頸部領域の手術を扱う存在として発足しており、複数科の人間で構成される日本頭頸部癌学会とは微妙に異なった位置づけにあります。扱う手術の中では頭頸部癌が中心的な位置を占めますが、それ以外にも急性炎症の切開・排膿、気道確保、外傷、さらに鼓室形成術、喉頭微細手術、喉頭枠組み手術などの機能改善の手術などさまざまなものがあり、本学会はいわば、「戦う耳鼻咽喉科医」の集まりといった位置づけになります。頭頸部癌は全癌の約5%を占めるのみで、頭頸部外科は癌を扱う外科の中ではminor な位置でしかありません。外科系はいわゆる3K に属するとされ、学生や研修医からは敬遠されがちですが、その中でも頭頸部癌手術、特に再建を伴う手術や頭蓋底手
術においては長時間にわたる手術と、それに引き続く患者管理に多大な労力が要ります。頭頸部外科医は、これだけのことをしているのだという自負と、患者さんからの感謝があるから、やりがいを感じて、悪条件に耐えてがんばっていますが、客観的に見て、社会の眼はこの領域まで届いているとはいえません。頭頸部外科という概念は社会的に殆ど認知されていないのではないのでしょうか?頭頸部外科を陽の当たるところに出して、正当に評価してもらうようにしなくてはなりません。出ることが新たな発展の誘因になるのですから。

 まず、現状を直視し、周囲からの評価を受け、それも加味して自己評価することが第一歩になります。自分の周りの人たち、患者、マスコミ、国民がどのような視点をもっているかを正確に認識しておく必要があります。次に、社会に認知されるための手段を考え、さらに、それを実して発進するというステップが要ります。この第2、第3段階においては、正しい視点を国民に持ってもらうために、マスコミにも働いてもらわねばいけないでしょう。こうした観点から、今回の学会のテーマは「明日に架ける_社会との対話」とし、その第1歩となるシンポジウム「社会の眼からみた頭頸部外科」やパネルディスカッション「境界領域とのクロストーク」などを企画しました。

 シンポジウム「社会の眼からみた頭頸部外科」では、マスコミ関係者、患者、看護師、医師、言語聴覚士の代表に上述したような趣旨に沿って討論してもらうこととしました。特に毎日新聞社の吉川学氏には基調講演としてマスコミからみた医療・外科医を論評してもらうとともに、われわれがマスコミを利用して情報を国民に提供するにはどうしたらいいのかを教授願うことにします。また、マガジンハウスの石崎孟氏には自身が患者となった体験から医師への注文、また、マスコミと医師の有益な共存を図るための提言を頂く予定です。この司会は浜松医大峯田周幸教授と私が担当します。社会の眼を意識してわれわれも変わるということを宣言したいと思います。

 もう一つのシンポジウムは神戸大丹生健一教授の司会による「動き出した頭頸部がん専門医制度」です。昨年発足した本制度ですが、それをしっかり定着させるために現状と問題点を明らかにしてもらい、今後の発展に結びつけていきたいと思います。

 パネルディスカッションにもテーマ関連のものとして「境界領域とのクロストーク」を設けました。これを企画するにあたって、境界領域とみなされる各学会に趣旨説明を送り、パネルへ学会の代表を派遣していただきたい旨の依頼をしました。脳神経外科、内分泌外科、呼吸器外科、歯科・口腔外科からは学会代表を推薦していただきました。これら各医師、歯科医師に参加してもらい、福田諭理事長に司会を願って、頭頸部外科と境界を接する部分での当科への要望、当科の抱える問題点などを抽出してもらい、協力体制の取り方についての提言を頂くことをめざします。

 もう一つのパネルディスカッションは「頭頸部癌手術後の経過不良症例に学ぶ」で、現在最も活動性の高い世代の医師から、いわゆるdifficult case での苦渋の経験を披露していただく企画です。埼玉医大菅澤正教授と国立がんセンター吉本世一医長の司会で、会員の方々にも共に考えていただくと、今後への展開に結びつく有益な場になるものと思います。

 特別講演は青山学院大学の福岡伸一教授による「生命を解くキーワード、それはー動的平衡ー」です。福岡教授は分子生物学者ですが、一昨年サントリー学芸大賞などを「生物と無生物の間」という新書で受賞されており、その文章力に定評があります。今回は氏の持論である「動的平衡」をテーマに興味深い話を期待しています。海外招聘講演はオランダ・ロッテルダムの小児病院からからハンス・ヘーベ先生を招いて「小児気道閉塞の手術療法の選択」をお話しいただきます。頭頸部外科医が扱う中でも最も困難な手術は小児の気道関連ではないでしょうか。彼はこの領域のエキスパートであり、スリリングな状況下で悠々と治療を行う美学を見せてくれるでしょう。

 このほかに現役教授がビギナーに手術のコツをビデオにより伝授する教育ビデオセミナーや、大ベテランによる手術の歴史のミニレクチャーも計画しました。

 会場の宇都宮は餃子の町として知られていますが、それ以外にもジャズの町(ナベサダを生んでいます)、カクテルの町(日本一に輝いたバーテンダーが多数おります)などとしても売り出しています。ぜひ学会の夜を楽しみにしてください。学会会期中の屋外会場でも餃子やワインを楽しんでいただこうと企画しております。さらに、栃木県は観光地にも恵まれています。あいにく真冬ですが、厳寒の日光や那須も趣はあるので、お元気な方は足を延ばしてください。



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